上野公園の一角に佇む「東京都美術館」は、アートと建築が共鳴する魅力的な空間です。東京を代表する美術館のひとつとして、数々の展覧会や公募展が開催されており、休日になると多くのアートファンでにぎわいます。今回は、そんな東京都美術館を実際に訪れて感じた“みどころ”と、建築的な特徴について紹介します。
東京都美術館とは
東京都美術館(Tokyo Metropolitan Art Museum)は、1926(大正15)年、日本で初めての“公立美術館”として開館しました。開館当初は「東京府美術館」という名称で、現在の建物は1975(昭和50)年にリニューアルされたものです。設計を手がけたのは、日本を代表する建築家・前川國男。彼は、ル・コルビュジエの弟子としてモダニズム建築を日本に広めた人物であり、この美術館も彼の代表作のひとつに数えられます。
上野駅から徒歩約7分、東京文化会館や国立西洋美術館、東京国立博物館などが立ち並ぶ“上野の森アートエリア”の中核を担っています。
基本情報
- 所在地:東京都台東区上野公園8-36
- アクセス:JR上野駅「公園口」より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」より徒歩10分
- 開館時間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
- 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日休館)、年末年始等
- 入館料:展示会によって異なる
- 公式サイト:https://www.tobikan.jp/ ※要確認
みどころ
みどころ①:多彩な展覧会と公募展
東京都美術館の最大の特徴は、展示内容の多様さにあります。常設展示は行わず、国内外の名画を紹介する「特別展」や、都民や美術団体が主催する「公募展」など、年間を通してさまざまな展示が入れ替わりで開催されます。
特別展では、ルーヴル美術館やメトロポリタン美術館との共同企画など、世界的に注目される展覧会が開かれることも多く、アートファンにとっては見逃せないスポットです。一方、公募展の会場では、学生や一般の方々の作品が展示されており、プロの美術作品と並んでアマチュアの表現にも触れられる点が、この美術館ならではの魅力です。
みどころ②:誰でも立ち寄れるオープンスペース
東京都美術館は「アートへの入口」として、誰もが気軽に立ち寄れる開かれた空間づくりを意識しています。エントランス前の広場にはベンチや緑が配置され、休憩や待ち合わせにも最適。館内には無料エリアも多く、1階の「アートラウンジ」や「ミュージアムショップ」などは、展示を見ない人でも利用可能です。
また、館内にはカフェやレストランも併設されており、展覧会の余韻を味わいながら食事やティータイムを楽しむことができます。
建築的特徴
建築的特徴①:レンガ色の外壁と水平ライン
東京都美術館の外観でまず目を引くのは、深みのあるレンガ色のタイル張りの壁面です。これは、前川國男が好んで用いた素材であり、冷たい印象を与えがちなモダニズム建築に温かみを添える工夫でもあります。
建物は水平を強調する構成で、外壁のリズミカルなラインが静謐な印象を生み出しています。直線を基調としたファサードの中に、エントランス部分の開口や中庭の吹き抜けが効果的に配置され、光と影のコントラストが際立ちます。
建築的特徴②:地形との調和と“くぐり抜ける”動線設計
東京都美術館は、上野公園の環境と調和するよう計画され、建物のメインフロア(エントランスホール)を地下1階に置き、プロムナード(エスプラナード)から地下広場へ求心的に導く動線が組まれています。
館内は中央の広場(中庭)/吹き抜け的な中核空間を軸に、企画展示棟・公募展示棟・文化活動棟などが立体的に展開。前川建築の特徴である、中庭や吹き抜けを介して“くぐり抜ける”ように回遊する体験が得られます。
建築的特徴③:1970年代モダニズムの再構築
この建築が完成した1975年当時、日本では“高度経済成長の終わり”を迎えつつあり、社会全体が新しい時代への転換期にありました。そんな中、前川國男は単なる機能主義を超えた「人間味のあるモダニズム建築」を模索します。
東京都美術館では、コンクリートやスチールといった工業的素材の中に、土の色を思わせるレンガ色のタイルや自然光の取り込みを組み合わせ、都市の中にあっても“ぬくもり”を感じさせる空間を実現しました。建築そのものがアート作品のようでありながら、訪れる人に寄り添う柔らかさを持っています。
まとめ
東京都美術館は、単なる展示空間ではなく、「人とアートをつなぐ公共の場」として設計された建築です。前川國男が生み出したシンプルで力強いデザインは、今見てもまったく古びることがなく、むしろ現代の建築や都市デザインに通じる先見性を感じます。
展覧会を目的に訪れるのはもちろん、建築そのものを楽しむために足を運ぶのもおすすめです。上野の森に響くアートと建築の調和を、ぜひ現地で体感してみてください。



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